生体肝移植

2024年現在、神奈川県下で成人の肝移植をおこなっているのは当院のみとなります。横浜は全国一番の人口を有する政令指定都市であるという社会的背景から、神奈川県内の病院から関連病院から肝移植が必要となるような急性・慢性の肝不全、Child C肝細胞癌症例を受け入れております。

生体肝移植適応

当院では生体肝移植レシピエントの適応について、下記の基準を満たす方としております。
▶65歳以下
▶薬物依存がない
▶自立歩行可能な状態(急性肝不全は除く)
▶肝臓を除く2臓器以上に臓器不全を認めないこと
▶活動性感染症のないこと
▶肺高血圧症がないこと
▶肝細胞癌の場合ミラノ基準内(単発で5㎝以下、または3個以内3㎝以下)または5-5-500基準
▶肝臓以外に進行悪性腫瘍がないこと
またドナーは18歳以上65歳未満、3親等以内としております。

当院で生体肝移植を施行した方の原疾患の内訳は、肝細胞癌(n=15)、B型肝炎肝硬変(n=14)、劇症肝炎(n=14)、原発性胆汁性肝硬変(n=10)、 C型肝炎肝硬変(n=6)、アルコール性肝硬変(n=6)、原発性硬化性胆管炎(n=2)、自己免疫性肝炎(n=2)、胆道閉鎖症(n=2)、その他(n=4)となっています。

治療実績と術後管理

2023年は、計3例の生体肝移植を施行しました。
当科の肝移植は、1997年から開始し2023年12月まで、計75例となりました。1年生存率は84.5%、5年生存率は74.0%(下図)と、成人生体部分肝移植全国平均と同等の治療成績となっています。また2012年以降に生体肝移植を施行した21例では在院死は1例も認めておらず、2012年以前と比較しても治療成績向上を認めております。


当院における術後管理の特徴としては、下記の取り組みを行っており移植患者さんの術後治療成績改善に努めております。
①リハビリテーション科による入院前リハビリテーション。
②口腔外科による術前歯科検診。
③術前シンバイオティクスの導入。

詳細な術前画像評価による精緻な手術

肝臓は個人間においてその形状や大きさのバリエーションが非常に大きいだけでなく、その内部の脈管分布が非常に複雑になっています。より安全で確実な治療や手術を施行するためには、手術対象患者さんの肝臓情報として形状や大きさ、その内部の脈管分布や疾患情報を十分に考慮する必要になります。
当科ではドイツの MeVis 社と提携しており、画像処理法と手動を併用し、各患者に対応した各脈管の抽出結果を可視化することで、より精緻な手術治療を目指しております。



(文責 肝胆膵グループ 澤田雄、佐原康太)