原発性肝癌
B型C型肝炎持続感染に起因する肝細胞癌は全国的に減少傾向にあり、当科の肝細胞癌の手術症例も長期的には減少傾向にあるが、2019年度の肝細胞癌の症例登録は36例で前年度より増加し、1992年から2019年までの肝細胞癌初回肝切除症例は748例、再肝切除症例は75例となった。初回肝切除症例の背景肝炎の原因はB型肝炎12例、C型肝炎8例、NBNCが15例、B型C型共感染が1例であり、NBNCが原因として一番多かった。
NBNCの多くは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)由来であり、NASH由来の肝癌症例では、ウイルス性肝炎症例と比較すると肝機能は保たれているものの、肝臓の定期経過観察がなされていないため約半数の症例が腫瘍径5㎝を超えていた。
初回肝切除症例の5年生存率は60.4%、無再発生存率は34.2%で年々上昇しており、Stage別の5年生存率はStage I 82.5%、Stage II 71.4%、StageIII 52.5%、StageIVA 37.9%で他施設と比較しても遜色ない結果であった。
予後規定因子は、肝内転移陽性、Liver damage BC、AFP400以上、腫瘍個数4個以上、最大腫瘍径50mm以上であった。
術前肝機能評価に関しては、アシアロSPECT/MDCT融合画像による分肝機能評価を行い、術前肝不全予測に応用している。特に門脈塞栓術後は、体積変化以上に肝機能は非塞栓葉へ移行しており適応の拡大の可能性が示唆されている。
術後管理に関しては肝不全死予防のため、早期予測、早期介入を目指しており、術直後の採血でT.Bil>1.5mg/dlかつAT-III<50%はISGLS定義の肝不全B,Cとなる危険群であり早期介入が必要と考えている。
再発後治療に関しては、肝癌治療アルゴリズム2017に沿って行っているが、初回肝切除時にvp陽性かつ初回肝切除から12カ月以内の再発症例に関しては早期に再発することが多いため、手術以外の治療を行っている。また、肝外転移症例に対しては1次治療薬としてレンバチニブまたはソラフェニブ、2次治療薬としてレゴラフェニブ、ラムシルマブを用いている。
(文責 原発性肝癌 肝胆膵グループ 熊本宜文)