乳癌

最近の乳癌診療においては,薬物療法の更なる個別化もさることながら,手術に関しても対応しなくてはならない事象が発生しています。2019年7月、国内の乳房再建で主に用いられてきたAllergan社のテクスチャードインプラントが、ブレストインプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL: Breast Implant-Associated Anaplastic Large Cell Lymphoma)発症リスクのため使用できなくなり、保険適用での人工物再建を行うことができなくなりました(2020年2月からはスムーズタイプのインプラントが使用可能となっています)。
また2020年4月から遺伝性乳癌卵巣癌で乳癌または卵巣癌を発症した患者のリスク低減乳房切除術が保険収載されることが決まりました。

2019年の原発性乳癌の手術件数は,335件(福浦88件,センター247件)と増加傾向が続いています。また県内の関連11施設を併せると年間1500例にのぼります。
この症例数の強みを生かすべく、関連病院での共通データベース化を進めています。福浦とセンター両施設における乳癌手術症例全体の5年全生存率は91.7%,10年全生存率は83.2%でした。
Stage別5年生存率は、0期:98.0%、Ⅰ期:97.7%、Ⅱ期:91.8%、Ⅲ期:72.7%で、10年生存率は0期:95.5%、Ⅰ期:93.4%、Ⅱ期:82.9%、Ⅲ期56.7%でした。
手術内訳は2007年に温存手術のピークがあり、以後再建手術の増加に伴い温存率は低下の傾向を認めています。2019年は部分切除32.2%,再建含めた乳房切除が67.8%でした。

グループでは月に一度研究カンファレンスを行い、若手の研究指導や新規研究の相談、学会の予演会などを行っています。YCOGでの臨床研究のみならずCSPOR,JBCRG,SNNS研究会などの全国的な臨床試験にも参加するとともに、日本乳癌学会の委員会や班研究のメンバーとしても活動しています。
また2018年度から引き続き横浜市医療局の取り組みとして、福浦・センター・横浜労災・みなと赤十字が横浜市乳癌連携病院として、遺伝診療や人材育成、市民啓発に連携して取り組んでおります。
めまぐるしく変容していく乳癌診療には,高度の専門性と,きめ細やかな対応を求められています。本年も技術を磨き,知識を深め、個々の患者に最適な医療を提供できるよう、研鑽を積む所存です。
(文責 乳腺グループ 山田顕光、山本晋也、成井一隆)

術式の年次推移 手術件数の年次推移 stage別生存曲線