治療実績・研究実績

原 発 性 肝 癌

 我国では1989年から輸血用血液のC型肝炎のスクリーニング、住民を対象とした肝炎ウイルス検査を開始し、自覚症状のないHCVキャリアの拾い上げを積極的に行ってきました。さらに、C型慢性肝炎の治療に関しては直接作用型抗ウイルス薬の登場によりウイルス排除率は上昇しております。このため、C型肝炎持続感染に起因する肝細胞癌は全国的にも減少傾向にあります。当科でも、2014年度の原発性肝癌新規登録症例47例のうちC型肝炎に起因するものは16例(34%)と減少傾向にありました。それに対し非B非C型(NBNC)肝癌症例は24例(51%)と増加傾向にあり、初めて過半数を超えました。NBNC肝癌の多くは大量飲酒や非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)由来であり、特にNASH由来の肝癌症例では糖尿病合併率が27.3%、虚血性心疾患合併率が8.1%でウイルス性肝炎由来の肝癌症例と比較し有意に高く術前の評価や術後管理が重要になってきております。
 術前肝機能評価に関しては、アシアロSPECT/MDCT融合画像による分肝機能評価を行い、術前肝不全予測に応用しています。特に門脈塞栓術後は、体積変化以上に肝機能は非塞栓葉へ移行しており適応の拡大の可能性が示唆されております。
 術後管理に関しては肝不全死予防のため、早期予測、早期介入を目指しており、術直後のT.Bil>1.5かつAT-III<50はISGLS定義の肝不全B,Cとなる危険群であり早期介入が必要と考えております。またERASの導入を行い、2014年度の平均術後在院日数は10.3日と短縮しております。
 1992年から2014年までの520例の切除例のうちR2切除を除外したStage別5年10年生存率はそれぞれStageI:79.4%、49.4%、StageII:70.2%、46.5%、StageIII:48.1%、33.5%、StageIV:35.1%、19.7%でした。予後規定因子は、肝内転移陽性、Liver damage BC、ICG20以上、AFP400以上、fc-inf陽性でした。
 進行肝細胞癌に対する術後補助化学療法には、自費となりますがインターフェロン併用5-FU動注化学療法、5FU+CDDP療法を行っております。
 術後残肝再発症例に対する再肝切除も積極的に行っており、2012年度までの残肝再発症例210例中の45例(21.4%)が再肝切除を受け、5年10年生存率はそれぞれ、52.5%、20.4%で初回肝切除症例と比較し有意差を認めませんでした。再肝切除症例の予後規定因子は、無再発期間1年未満、初回肝切除時の門脈浸潤陽性であり、この2因子が陽性の症例は再肝切除後1年以内に再々発を来す為、手術よりTACEなどの低侵襲な治療が適正であると考えられています。
 基礎研究では、動物モデルを用いた肝再生、肝不全の病態解析ならびに治療を継続しており、肝不全の新たなる治療を模索しております。

熊本宜文

治療実績・主な業績