治療実績・研究実績

転移性肝癌

転移性肝癌  (文責:武田和永、澤田雄)
 当科では大腸癌肝転移に対して、1992年より2014年末で576例に初回肝切除を実施してきました。2014年は累計41例の肝切除を施行し(図1)、非大腸癌症例を含めると、累計44例の肝切除を施行しました。大腸癌肝転移初回肝切除症例の5年生存率は50.4%でした(図2)。さらに、残肝再発症例に対しても、積極的な再肝切除療法を施行しており、91例(累計)の患者様に対し、切除を実施してきました。5年生存率は44.5%で、良好な成績を保っております。
 現在の課題は、他院で切除不可能と判断された肝転移症例に対し、化学療法・術式を組み合わせることで切除を可能にすることだと考えています。
1)両葉多発腫瘍(4個以上)、2)巨大腫瘍(≧8cm)、3)腫瘍脈管の浸潤している腫瘍、4)予定残肝が小さい場合、5)肝蔵以外に転移巣が存在する場合には、切除困難例と判定されることが多いですが、当院ではこのような患者様に対し、臨床腫瘍科とも密に連携し、術前化学療法を実施することで、腫瘍の縮小後に肝切除を実施する戦略をたてています(図3)。
 特にCircadian chronotherapy(肝動注クロノ療法)積極的に施行しており、これまで88例に実施し、74例が切除可能となりました。
 さらに、切除後の予定残肝が小さい場合には、肝臓の再生能を利用して、門脈塞栓術併用切除を含めた多段階肝切除や、3D画像を利用した血管合併切除併用肝切除を実施しています。

血管合併切除再建を伴う肝切除
 転移性肝癌肝切除において、長期に化学療法を施行された症例では肝予備能が低下していため、腫瘍が主要血管に浸潤している場合、当該血管の切除を行うと大量肝切除につながり残肝容量不足に陥る危険性があるため、血行再建が必要となります。現在では術前に3D画像を作成し(図4)、術前・術中シュミレーションを行っています。
 以上のような工夫をしながら、当科では大腸がん肝転移の患者様に対し、最大限安全な手術療法を施行しており、さらに臨床腫瘍科・大腸グループとも連携しながら診療をすすめております。また、大腸がん肝転移症例の他に、婦人科疾患、神経内分泌腫瘍、胃癌などからの肝転移の患者様に対しても肝切除が有効な治療となる場合があり、このような場合には、積極的に切除療法を選択しています。

 

【図の説明】

転移性肝癌
図1 転移性肝癌初回肝切除年次推移

転移性肝癌
図2 初回肝切除後生存率

転移性肝癌
図3 当科での大腸癌肝転移治療方針
※上記画像をクリックすると拡大表示されます。

転移性肝癌
図4a 術前3D画像

転移性肝癌の診断で当院紹介され、化学療法施行後、肝切除の方針となった。
術前診断では、Sg.8 腫瘍が、右肝静脈に21mm にわたる浸潤が疑われた。しかし、全周に浸潤はしておらず、左大伏在静脈を用いてパッチ再建をする方針とした。

転移性肝癌
図4b 術中所見(1)。

右肝静脈に浸潤を認め、予定どおり、左大伏在静脈を採取して再建することとした。

転移性肝癌
図4c 術中所見(2)。
左大伏在静脈を12cm採取した。

転移性肝癌
図4d 術中所見(3)。
右肝静脈パッチ再建を施行した。再建時間は右片葉阻血を行い、40分であった。

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